令和2年度 宅建士試験はココが変わる~試験に影響する民法改正の主な内容~
今回の民法改正は、債権法、相続法ともにかなり広範囲ですが、
宅地建物取引士試験の出題傾向から、重要な点を簡単にまとめてみました。
以前から学習している人は変更点を整理する必要がありますし、
これから学習する人は古い参考書・問題集の解説等から、
間違った知識を覚えないようにしましょう!!
改正点=出題傾向が高い
まず出題されるだろうと考え重点的に学習しましょう。
他の受験者も同様に学習してきますので、
ココを落とすと点差が開いてしまいます。
宅建は成績上位約15%程が合格する試験なので、
民法改正点の理解度がそのまま合否に直結します。
◆債権法の改正について
■売主の契約不適合責任
売主の責任の性質が、特別な法定の売主の無過失責任から、
契約の内容に不適合ということになる契約責任に変わり、
引き渡された目的物が契約の内容に適合しない場合に、
買主は売主に対して、
代金減額請求、追完・修補請求、損害賠償請求、
契約解除権の行使ができるようになった(562条、563条、564条)
これらの権利を行使するためには、
契約の内容に不適合な事実を知った時から1年以内に、
その事実を通知することが必要となった(566条)
移転した権利が契約の内容に適合しない場合も、
買主は売主に対して、
代金減額請求、追完・修補請求、損害賠償請求、
契約解除権の行使ができるようになった(565条)
■詐欺
第三者詐欺の場合に取り消しができるのは、
相手方が事実を知っている場合のみならず、
知ることができた場合でもよいことになった(96条2項)
また、詐欺による意思表示の取り消しを対抗できない第三者は、
善意無過失の場合に限られることになった(96条3項)
■意思無能力
意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、
その意思表示は無効とする旨の規定が明文化された(3条の2)
■錯誤
錯誤による意思表示は取り消すことができるに変わった。
また、錯誤による取り消しは、善意でかつ過失がない第三者に
対抗することが出来ないと規定された(95条4項)
■時効の完成猶予・更新
従来の時効の中断という取り扱いが、
時効の完成猶予及び更新として規定が見直された。
裁判上の請求をすることによりその事実が終了するまでの間は、
時効は完成しない(147条1項)
これが時効の完成猶予です。
確定判決によって権利が確定したときは、
当該事由が終了した時から新たに時効が進行する(147条2項)
すなわち更新となります。
また、権利の承認があったときは、そのときから新たに進行を始める(152条)
■債権の消滅時効
債権者が権利を行使することができることを
知った時から5年間とされた。
また、権利を行使することができる時から10年間とされた(166条1項)
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効は、
権利を行使することができる時から20年間となった(167条)
■代理
無権代理人の責任について、
代理人が自己に代理権がないことを知って代理行為をした場合には、
その相手方は、
過失があっても無権代理人に責任追及できるようになった(117条2項)
■債務不履行
債務不履行による損害賠償請求について、
債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして、
債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは請求ができないと規定された(415条1項但書)
履行遅滞について不確定期限の場合は、
債務者が期限の到来した後に履行の請求を受けた時又は、
その期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞となる旨規定された(412条2項)
■連帯債務・連帯保証の絶対効
連帯債務者の一人に生じた事由が他の連帯債務者に及ぶこととなる事由を見直し、
履行、更改、相殺及び混同となった(438条、439条、440条)
従来絶対効とされていた履行の請求、債務の免除及び消滅時効は相対効となった。
連帯保証についても、従来は連帯保証人に生じた事由が主たる債務者に及ぶこととされていた履行の請求が、主たる債務者に及ばないことになった(458条)
■賃貸借の存続期間
50年を超えることができないと改正された(604条1項)
■不法行為の損害賠償請求権の消滅時効
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効について、
損害及び加害者を知った時から5年間という規定が新設された(724条の2)
■請負人の契約不適合責任
請負人が種類又は品質に関して、契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡した時、注文者は、
履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができる(636条、637条)
そこで建物その他の土地の工作物について、注文者は契約の解除をすることもできるようになった。
■債権譲渡
当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合であっても、
債権の譲渡は、その効力を妨げられないことになった(466条1項)
◆相続法の改正について
■配偶者居住権
配偶者は配偶者居住権により自宅での居住を継続しながら、
預貯金等の財産も取得できるようになった。
配偶者は被相続人の財産に属した建物(居住建物)に相続開始の時に居住していた場合に、遺産分割によって配偶者居住権を取得することにより、
終身又は一定期間、その建物に無償で居住することができる。
また、被相続人が遺贈によって配偶者居住権を取得させることもできる(1028条1項)
■自筆証書遺言
自筆証書遺言の財産目録について、手書きで作成する必要がなくなった(968条2項)
パソコンで財産目録を作成したり、通帳のコピーを添付することも可能に。
この財産目録には署名押印が必要です。
■遺留分制度
遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、
遺留分侵害額に相当する金銭の請求ができるようになった(1046条1項)
従前は遺留分減殺請求権の行使によって生ずる共有の割合が、
通常、分母、分子共に大きな数字となってしまうため、
持分権の処分に支障をきたすおそれがあったが、
遺留分侵害額請求によって生じる権利は金銭債権となり、
金銭を直ちに用意できない場合には、支払期限の猶予を求めることができるようになった(1047条5項)